学校や公民館で働く放課後学習支援員の仕事内容は、子どもたちの学習をサポートすること。そのためには勉強を教えるスキルも求められますが、児童や生徒の気持ちに“寄り添う”姿勢も同じくらい大切です。そこで今回は、放課後学習支援員の仕事を「始めてみたい!」という方へ向けて、児童・生徒とコミュニケーションを取るときに気をつけたいこと/心がけたいことをご紹介していきます。
褒められたことが、子どもの自信になる
放課後学習支援員が担当する学習サポート業務の内容は、児童・生徒が自力で考え、答えを出せるように育てること。その目的を達成するためには、子どもたちが自ら進んで勉強するように、学習意欲を高めることが求められます。いくら教える側のモチベーションや学習指導能力が高くても、肝心の子どもたちにやる気がなければ、成績を向上させるのは難しいものです。ここまで読んで「具体的に何をすればいいの?」と思った方もいらっしゃるでしょう。子どもとコミュニケーションを取る際に心がけるべきポイント。それはズバリ、“褒めること”です。子どもたちの頑張りを褒めることで、自信や自尊心を伸ばし、自ら進んで学習に向かう姿勢を育てられます。
その際にぜひ実践していただきたいのが、小さなことでもきちんと褒めること。「指示した課題を忘れずに解いてきた」「わからないことを質問してきた」など、大人から見れば当たり前に思うことでも、きちんと褒めてあげましょう。「自分の頑張りを認めてくれた」という経験が、勉強に対して前向きな気持ちを育むのです。
「成績が上がった」「試験の点数が良い」といった“結果”を称えることは、もちろん大事ですが……。子どもと関わる「放課後学習支援員」の仕事では、それと同じくらい苦手な教科を勉強したり、毎日復習をしたりといった“プロセス”を褒めることも大切です。そうすることで、子どもたちが「先生は私の努力をしっかり見ているんだ」という認識を持てるようになります。その気持ちがあれば、もし成績が伸び悩んだとしても、勉強への意欲を高く保ち続けられるでしょう。
「○○さん、毎日ちゃんと復習していたね」といったように、褒める言葉を伝えるときは、子どもたちの名前をしっかり呼ぶようにしてください。「自分のことを認めてくれた」という意識をより強く与えられるので、児童・生徒の自信や自己肯定感をさらに高められます。

子どもの将来を思うからこそ、きちんと叱る
とはいえ、ただやさしく接しているだけではいけない場面があるのも事実です。他の児童・生徒に迷惑をかけたときなどは、心を鬼にして厳しく注意しましょう。「叱ると雰囲気が悪くなるから」と放置していると、子どもたちが自分の過ちに気づく機会を逃してしまいます。そればかりか、「この先生なら何をしても怒られない」と思われてしまい、学習指導すら聞いてもらえなくなる……といったことも起こり得るのです。このような状況に陥らないために、子どもが悪さをしたときは、毅然とした態度で叱ることが重要。……ですが、ただ大声で怒鳴りつけたり、他の子どもや先生の前で“見せしめ”的に叱るのはNGです。子どもの自尊心を必要以上に傷つけるだけでなく、他の児童・生徒も委縮してしまう可能性があります。あくまで「子どもたちのためを思って叱っているんだ」という認識を忘れないで、冷静に叱ることを心がけましょう。
「なぜ迷惑をかけてはいけないのか」「真面目に勉強しないとどうなるか」といった“叱られる理由”を説明することも大切なポイントです。子どもたちが「自分は理由があって叱られているのだ」と理解できれば、恐怖や反感を抱かせずに、叱られたことにも納得してもらえるでしょう。
相手によって、叱る基準を変えないことも大事です。そうしてしまうと、「あの子はいいのに、なんで自分だけ?」と、講師に対する不信感を抱いてしまいかねません。あらかじめ注意する基準を明確にしておき、たとえ仲の良い児童・生徒であっても、間違いはきちんと指摘することを忘れないでくださいね。

「褒める」も「叱る」も、信頼関係が前提
頑張る姿を褒めたり、いけないことをしたら叱ったり……。このような行動は、子どもと講師の“信頼関係”が前提となっています。せっかく褒められるなら、自分のことをよく理解している、頼れる先生に言われた方が嬉しいものです。たとえ叱ることがあっても、「この先生が言うのだから直さなきゃ」と、素直に反省してもらいやすいことは、想像に難くありませんよね。では、どうしたら信頼関係をつくれるのでしょうか。対人関係に関することですから、打ち解ける方法はさまざまですが……。どなたでも取り組みやすい方法の1つが、最初に子どもたちの興味・関心を把握することです。「好きな漫画はある?」「将来は何になりたいの?」といった問いかけをして、どんな事柄に興味を持っているかを理解するようにしましょう。
「人見知りで……」「会話が苦手」といった子どもと接するときなど、児童・生徒がなかなか自分のことを話してくれない場合もあります。そんなときは、皆さんの方から積極的に“自己開示”してみてください。「学生の頃はバスケ部だったよ」「最近アニメにハマっているんだ」などと、ご自身の好きなこと/趣味/学生時代の思い出などを話してみましょう。「同じ部活です」「私もその作品知ってます!」といったように共通点が見つかれば、それをきっかけに仲良くなれるかもしれません。

子どもの心に寄り添う
多感な子どもたちですから、いつも楽しく学習に臨めるとは限りませんよね。進路/家庭環境/友人関係etc. さまざまな悩みを抱えながら机に向かうこともあるはずです。児童・生徒に向き合う「放課後学習支援員」の仕事では、そんな子どもたちの精神面をサポートすることも求められます。メンタルケアが求められる例の1つに、入試を間近に控えた受験生と接するシーンを挙げられます。志望校合格を目指して日々勉強に励む受験生には、常に焦りや不安が付きまとうもの。「模試の点数が良くなかった」「不安でぐっすり眠れない」など、さまざまな要因で、心身のバランスを崩してしまいがちです。
そんな受験生に対しては、とにかく前向きな言葉をかけてあげましょう。「模試で弱点が見えたから対策しようか」「あと20点上げれば合格できるよ!」などと、受験生がポジティブになれるような声かけをしてください。「先生と一緒に頑張ろう!」といったように、寄り添う姿勢を伝えるのも効果的です。
家庭の事情や友人関係etc. 児童・生徒の個人的な問題について打ち明けられる場合もあります。そんなときは、とにかく話をきちんと聞くことが大事。抱えている悩みを吐き出すことで、子どもの気分が軽くなるかもしれません。
その際に気をつけていただきたい点が、児童・生徒に自分なりの解決策を示さないことです。かわいそうだからと深入りすると、生徒の気持ちをさらに混乱させたり、皆さん自身の精神的な負担になったりするケースも。「先生と生徒」という関係を忘れずに、適度な距離感を保ちながら、しっかり話を聞いてあげる。そうした聞き役に徹してください。