「子育てが落ち着いたのでまた働き始めたい」「家事の合間に働いて家計の足しにしたい」という主婦の方。“教える仕事”に興味がおありなら、「放課後学習支援員」として働いてみませんか?
こちらは、放課後の時間を活用して子どもたちの学習をサポートする仕事です。週1~2日程度の出勤でOKな上に、勤務時間は比較的短め。学校内の教室や公民館で勤務する関係上、基本的に残業はありません。不規則なシフトに左右されることも少なく、子育てや家事の合間を縫って働けます。過去に教育現場や塾で働いた経験がある方はもちろん、子どもとのコミュニケーションに慣れている方にピッタリな仕事でしょう。
今回は、実際に放課後学習支援員をされているIさん(50代・女性)に、詳しい仕事内容などをお聞きしました。
月2回から働ける“教える仕事”
―― まずは、いまお勤め中の「放課後学習支援員」という仕事内容、さらには勤務時間について教えてください。私が働いているのは東京都23区内の公立中学校です。中学1年生を対象に、英語の基礎力アップを目的としたグループ指導を行なっています。10名の生徒を相手に1人で授業をしているのですが、時にはネイティブの先生をお招きして、私がサブティーチャーという形で授業することもあります。勤務日数は月2回。勤務時間は16時〜18時までの2時間です。
―― もともと教員をされていたのですか?
いえいえ。大学生のとき、中学・高校の教員免許を取得したものの、教職には就かず、英文雑誌を教材とした英語学習ツールの編集業務などをしていました。その後、家庭を持ってからは長らく主婦に専念。半年前、「放課後学習支援員」にチャレンジしてみようと思い立って、現在も働いています。
―― なぜ、「放課後学習支援員」として働いてみようと思ったのでしょうか。
月2回、16時〜18時までという勤務条件が、私にとって非常に都合良かったのです。今は日常的に、高齢の親元に通わないといけない生活。なので、それを前提に仕事を探すと、なかなか条件が合致しません。いまの仕事と出会えて本当に助かりました。また、大学時代に教育実習生として中学校でお世話になったとき、生徒たちが真摯に学ぶ姿が非常に印象的でした。心を打たれていいますか。そのことが記憶に残っていたので、できることなら「教える仕事」をしてみたいという気持ちもありましたね。
―― 過去に教育実習の経験があったとはいえ、初めて「放課後学習支援員」として生徒たちを指導するときは、やはり緊張されたのでは?
教壇に立つのは教育実習の時以来、約30年ぶりです。もちろん、初めは不安だらけでした。それを解消するため、実際に生徒たちが使っている教科書や中学生向けの英語教材をチェックして、教えるコツを掴もうと個人的にも勉強しましたね。あとは、EWORKさんで行なっている事前研修もたいへん役立つ内容でした。研修受講後は、ポンっと背中を押してもらったような気分になりました。

充実した事前研修で不安を解消
―― どんな研修だったのか、詳しく教えてください。「スタッフ・マニュアル」という冊子の内容に沿って、担当者の方に仕事の流れや学習支援の目的、指導上の注意点などを教えていただきました。対面でのやりとりですので、その場で分からない点をどんどん質問できたのが嬉しかったです。また、研修に同席していた先輩講師から直接お話を聞けたり、模擬授業の様子をパソコンで視聴したりしたので、仕事内容を具体的にイメージしやすかったです。
―― 実際に教壇に立ってみていかがでしたか?
先輩講師の方から、「生徒のネームプレートを用意した」「文法についてまとめたプリントを作成して配った」といったご自身の体験談を伺っていたのです、私も同じように準備をして当日を迎えました。そのおかげもあって、生徒の名前をすぐに覚えられましたし、教え漏れもカバーできたと思います。生徒たちも真面目に授業を受けてくれて嬉しかったですね。塾とは違って、生徒たちも一度家に帰宅するわけではありませんから、緊張感を保ったまま授業に臨んでくれていると思います。あと、これは個人的な話なのですが……。私自身、都内の公立中学校出身でしたので、校舎や教室の雰囲気が懐かしく、授業をしながら中学生時代の気持ちを思い出しましたね(笑)。当時は先生に対して抱いていた「こんなふうに教えて欲しいのに」という気持ちもよみがえり、今はそれを活かした授業をできていると感じます。
―― 生徒たちに接するときはどんなことを意識しているのですか?
目を見て話すこと。生徒たちをひとまとめにしないで一人一人と向き合うこと。明るく楽しく、メリハリのある授業をすること。そんなことを心がけています。やっぱり生徒たちには、「英語って楽しいんだな」「もっと学んでみたいな」と少しでも思ってほしいですから。
―― 授業をする中で、嬉しかったエピソードがあれば教えてください。
プリントを手渡しするときや、拾った消しゴムを渡すときに「Here you are.」と生徒に一声かけるなど、授業中はなるべく英語を使うようにしています。それは私が個人的に意識していることで、特に生徒たちには強制していなかったのですが……。ある生徒が宿題を提出するとき、私に「Here you are.」と言いながらプリントを渡してくれたのです。それを聞いたときは、吸収力の高さに驚かされました。
―― 逆に大変だったこと、苦労したことがあれば教えてください。
授業に出席している10名の中には、その日の内容を完璧にマスターしている生徒も、板書をノートに書き写すだけでも手いっぱいの生徒もいます。理解力にバラつきがあるときは、どこに照準を合わせればいいのか悩ましいですね。私はそうしたとき、理解度が高く時間を持て余している子には「この問題を解いていて」と課題を与え、理解できていないと思われる子には重ねて説明するなど、全体のレベルアップを図れるように心がけています。
これから生徒たちと向き合う中で、大変なことがまだまだあるかもしれません。しかし、「何かあったらいつでもご連絡ください」と声をかけてくれる先輩講師の方もいらっしいます。学校の教職員の方々も皆さん協力的です。授業前・授業後は、「放課後学習支援員」の管理を担当されている副校長先生に、毎回ご挨拶へ伺うんですが、教室設営を手伝っていただけるなど、教えやすい環境づくりをサポートしてくださいます。とても心強いですね。

仕事のやりがいや社会的意義について
―― お給料の面ではどのように感じていますか?グループ指導をするのは私にとって初めての経験だったので、予習やプリント準備に時間がかかることもあります。とはいえ、実際に教壇へ立っている時間を考えると、かなり時給が良いお仕事なのではないでしょうか。その上、授業後は学校への報告書作成と片付けだけで業務が終わり。残業はありません。家族もいる関係であまり遅い時間まで働くのは極力避けたいと思っていたので、毎回必ず18時で業務が終わるのが、とてもありがたいです。
―― 家族との生活を大切にしつつ、無理なく働かれているんですね。
そうですね。それに、生徒たちが学習に意欲的に取り組む姿勢、楽しみながら学んでいる様子を見ると、仕事にやりがいや社会的な意義を感じるんです。大人数を一斉に指導する通常の授業だと、勉強につまずく生徒がどうしても出てきてしまいます。また、家庭の事情で通塾できない生徒もいます。放課後学習支援の場では、そうした生徒たちに学習機会を与えられる。教育格差を始め、さまざまな問題を抱える今の社会にとって、「放課後学習支援員」は必要不可欠な存在なのではないでしょうか。